星が降るように見える神秘的なサンゴの産卵は、満月の夜に行われます。産卵することからもわかるように、サンゴは植物ではなく動物ですが、自分では動くことが出来ません。そのため、生息している周辺の環境が悪化すればすぐにダメージを受けて白化してしまいます。
白化したサンゴは、繁殖を行う事も移動する事もできずその場所で崩れてしまうのです。そんな悲しい、海の砂漠化はどうして起きるのでしょうか?
サンゴがある海は、生態系がバランスよく保たれている豊かな海だといわれています。しかし、最近グレートバリアリーフや沖縄の石垣島など、世界各地の海で見られた美しい色とりどりのサンゴが、次々と白く少なくなっています。
地球温暖化減少の影響が海中にもたらしている目に見える大きな変化が、この海の砂漠化とも呼ばれているサンゴの白化現象です。白化した珊瑚は、酸素を作り出すメカニズムを失った状態です。これは、キレイな珊瑚が見られなくなるということだけでなく、温暖化を促進させ私たち人間を含む生態系にも大きな影響を与える現象です。
陸地の森林と同じように二酸化炭素を取り込み、酸素を作り出すメカニズムを持った珊瑚が白化することで、海の生態系は今急速にバランスを失っています。
普段私たちが見ているカラフルな色のサンゴは、海の中に生えている植物のように見えますが、クラゲ、イソギンチャクと同じ腔腸動物の仲間です。たんぱく質 で出来ている身体のまわりに、褐虫藻という藻類をまとわせています。
この褐虫藻は植物なので、二酸化炭素を使い光合成をして酸素とエネルギーを生み出しま す。この時作り出される栄養分と酸素を珊瑚がもらい、代わりに光合成に必要な二酸化炭素を褐虫藻に供給しています。
両者はお互いに必要なものを供給しあっ ている共存関係にあり、褐虫藻の色素がサンゴを美しく見せているのです。
珊瑚の白化現象主にサンゴの海水温度の変化や紫外線の変化、塩分濃度の変化、生態系破壊による食物連鎖の変化などによるストレスが原因といわれており、環境破壊のいくつもの要因がサンゴの白化現象を引き起こしますが、主な要因は下記の二つが大きな理由となっています。
サンゴが白くなるのは、褐虫藻がサンゴからはじき出されてしまう、周辺の環境が生息できない状態になってしまうなどといったことが原因です。
サンゴから褐虫藻が追い出されるのは、サンゴ自体に強いストレスが加わると起こる現象です。
現在までにも、海水が酸性になってしまうといった水質汚染や不法投棄、人口建造物などによる環境の変化がサンゴの強いストレスを与えると、サンゴは共生している褐虫藻を追い出してしまうことがあります。
温暖化によって海水温度が年々高くなっているため、プランクトンが異常発生し、周辺海域に十分な光が届かなくなると褐虫藻は光合成を行うことが出来なくなります。そのため、褐虫藻は、光を求めて共生していた珊瑚を離れ、移動してしまいます。
また、褐虫藻は水温が一定以上になると繁殖・生息できなくなり珊瑚を離れてしまいます。裸になってしまった珊瑚は酸素・栄養供給源を失うことになり、軸となる石灰部分だけになっているため白く見えます。これがサンゴの白化現象の仕組みなのです。
褐虫藻が居なくなってしまうサンゴの白化現象とは別にホワイトシンドロームという同じくサンゴを白くしてしまう病気が流行っているようです。
ホワイトシンドロームの原因はまだ定かではないのですが、海水温の上昇によっても発生頻度があがるようです。
グレートバリアリーフは、400種類以上の珊瑚が生息する世界遺産にも登録されている美しい珊瑚礁です。もともと、栄養豊富な水質の良い海で珊瑚と沢山の海洋生物が暮すのに最適な水温を保つ海域として世界的にも有名な海域でした。
しかし、ここ数年オーストラリア周辺では、100年に一度といわれる旱魃や急激な気温上昇によるエルニーニョ現象や突発的な豪雨などによって水温が一気に上がり、陸地から土砂が大量に流れ出すといった状態が続いています。
以前は、日本がそのまま入ってしまうくらい広かった珊瑚礁は年々小さくなっています。現在、オーストラリアではグレートバリアリーフの珊瑚を守るための規制や対策が厳しく取られていますが、気候変化によるダメージを防ぐ有効な手立てが無いのが現状です。
日本にもダイバーたちの集まる美しい珊瑚礁を見ることの出来る石垣島ですが、人気の観光スポットとして数十年前から急増したマナーを知らない観光客によって多くの珊瑚が折られたり、踏まれたりしてきました。
そして珊瑚は激減し、サンゴと海の環境を保護する活動が進められてきましたが、一度サンゴがすめなくなった海を珊瑚がすめる海に戻すのは簡単なことではありません。
また、周辺海域の開発計画話が何度も起きるたびに、周辺住民や保護団体がサンゴと海域の保護を求めて活動を続けてきました。そのおかげで、以前に比べマナーを守らない観光客の数は減りました。
しかし、最近の温暖化によって変化した海流が運んでくる周辺諸国から不法投棄されたゴミが流れ着き、海域や水質を汚染している越境汚染が問題になっています。
海がつながっている一つのものですから世界中の海やさんごについて、一人ひとりが真剣に考えることがサンゴの白化現象を食い止める有効な手段といえます。