大気中に存在する酸性汚染物質が含まれた雨のことで、霧や雪なども含めて「酸性雨」とばれる酸性降下物の一つです。もともと大気中には酸性物質である二酸化炭素が含まれているため、公害の少ない環境でも若干酸性になっています。また、自然状態でも中国から風に乗って運ばれてくる黄砂や火山灰などには、酸性物質の含まれたガスやチリが多く含まれているため地域や環境によって雨や雪、霧が酸性になる場合もあります。
そのため、産業活動や生活環境によって成分が変化しているかどうかは、Ph地が5.0以下の場合や公害・大気汚染物質が含まれている量を観測することで判断されています。
石油や石炭などの生活や産業に欠かすことの出来ない化石燃料は、燃やすと二酸化炭素や硫黄・硫酸・窒素酸化物などを排出します。これらは大気中を細かいチリやガスとして漂っていますが、これが水蒸気を含む雲のなかでイオン化して雨や雪にしみ込みます。こういった酸性の雨が降ると植物の活動に大きなダメージを与えてしまい、森林の生態系にも影響を与えます。
また、地面にしみ込んだ酸性の水分は川の水や海水中にも溶け出します。これらは、植物の根や魚介類の体内へも吸収されるため、生態系のバランスも崩してしまうことになります。
大気中の酸性物質は、空気中の水蒸気にしみ込み雨や霧、雪としてふってきます。そのため、降り始めの雨や一つ一つが水よりも細かい霧には、含まれている酸化物の濃度が高くなり、その濃度は、酸性雨の10倍近くにもなります。また、霧が発生する状態は空気の流れが滞りやすく、細かい水の粒子は蒸発しやすいという特徴があります。ですから、酸性霧が蒸発した後には濃度が高くなった液体や固形に近くなった物質のみがそこに残ってしまうことになります。
しかし、雨と違い発生している時間が短かったり、光化学スモッグとの区別がつきにくい場合もあるためあまり注意されていないことが多いようです。
酸性雨の影響が少ない地域でも、気温が高くなる春先には川や海に流れ出す酸性物質の量が一気に増加してしまう現象がおこり、この現象のことをアシッドショックといいます。
このメカニズムは、気温の変化が大きく関係していて地球温暖化とも深い関わりがあります。
まず、雨や雪の水分の中に含まれた酸性物は、寒い冬には凍りついたまま蓄積したり雪が大量につもったまま保存されています。気温が上がってくると、この雪や氷は溶け出しますが、この時一緒に大量の酸性物質も大気中、土壌中に流れ出してしまいます。自然状態で若干酸性になっている氷や雪が溶け出しても、一気にかなりの量が放出されるため天然の中和サイクルでは処理しきることが出来ません。アシッドショックは近年の地球環境の悪化でさらに高い傾向を示しているようです。
工場や車の排気ガスなどに含まれる二酸化炭素や硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)が、酸性雨を作り出す原因になっています。これらは光化学スモッグや温室効果ガスの発生源でもあるため、近年様々な規制や対策が行われています。中でも硫黄酸化物排出量が多い石炭を使ったエネルギー利用は、各国で規制の対象となっています。
酸性雨は植物の葉や根から吸収され、葉を枯らしてしまいます。だんだんと葉の数が減った植物は、正常に光合成が行えません。
さらに土から酸性の水を吸収していると根も弱ってしまい、水分を上手く吸い上げることが出来なくなり立ち枯れの原因になります。
特に酸化物を排出する工場が隣接するヨーロッパやカナダなどでは酸性雨が降りやすく、30年以上前から周辺の森林の多くが衰退するという影響が出ています。
大気中の酸性物質が含まれている雨で、ブロンズ像や一般家屋の屋根、コンクリートなどにダメージを与えることで知られていますよね。
酸性物質の含有度が地域によって異なるため、一般家庭の屋根の耐久性も違っていますが、特に大きな影響が出ているのが歴史的建造物や世界遺産などです。中でもローマ神殿やバルセロナのサグラダファミリア、中国・インドの大理石の象などには、すでに数多くのダメージが報告されています。そのため、これ以上ダメージが広がることを防ぎ、環境問題への対策が急がれています。