実際には産業革命後にありえないスピードで進む温暖化や環境汚染に対して、専門家などは1970年代から議論の場が作られてきました。
しかし、産業の発展を優先し、環境対策を優先させることで国益を損なう可能性などがあることから、危機的認識が薄く一般的にはあまり知られていませんでした。
そこで、真剣に地球の未来について考え、話し合ったのが京都会議と京都議定書です。この中では、温室効果ガスを大量に排出する先進国では、地球温暖化の進行を食い止めるために必要な削減目標やその仕組みなどの対策が組み込まれています。
日本の京都で行われた京都会議では、温暖化対策の大きな指針となる「京都議定書」が発効されました。「だんだんと温かくなる地球の気候をどうにかしなければいけない」と世界各国で協力して現状と対策、未来の地球について話し合ったのが、京都会議です。
今までも、何回か環境対策について国際会議が行われてきましたが、産業を優先させず温暖化対策を優先にしっかりとした方針がだされたのは、京都議定書が初といえるかもしれません。
この京都議定書を制定させた口と会議野の議長国は私たちの住む日本です。議長国として日本が優先して削減目標を達成し、先進国としての行動力とリーダーシップの取れる国であることを各国に示したいですよね。
議定書の中心となっているのが温室効果ガスの排出量が多い先進国などの削減目標です。この削減目標を達成するために、京都メカニズムと呼ばれる仕組みがあります。
京都議定書に署名した各国が、2012年までに達成する排出量の削減目標を設定し、それに向けて社会の方向性や対策を立てています。
削減目標達成の為に、各国が協力して削減対策を行ったり、削減量取引をするなど、効率よく各国が削減していけるような仕組みが作られています。
温室効果ガスがビッグマーケットとして注目されているのを知っていますか?
京都議定書には、削減目標を達成するための様々な仕組みが組み込まれていますが、その中でも国際取引としての史上が確立されつつあるのが、炭素マーケットです。これは、目標を上回った分の排出量を他の先進国に売ることが出来る、「排出量取引」を利用したものです。
社会全体の対策手段や一人ひとりの削減努力によっては、削減目標を上回ることが出来ます。これを削減達成が難しい地域や企業が購入することで、購入した分を自分の削減量として加えることが出来るという仕組みです。より温室効果ガスを減らせば、国も会社も得をして地球環境も守ることが出来るという仕組みですね。
温室効果ガスの削減目標値を定めた先進国同士が、資金・技術面で協力し合って環境対策事業や新しいエコ技術を開発する上で削減できた分を分け合うことが出来るという仕組みです。
単体では足りない部分を、お互いに持った高い技術と資金を出し合い・協力することで相乗効果が生まれます。そこで生まれた削減量は、共同実施を行った国どうしで分け合うことができるのです。
途上国では、温暖化対策によって産業の発展に支障が出ることを考え京都議定書には署名していないところが多くあります。そこで、京都議定書には、先進国が途上国に資金や技術提供を行うことで環境対策を行う仕組みがあります。
一定の排出量削減をしなければいけない先進国が途上国に協力して、途上国内で温暖化対策を行った事業や開発を共同で行うことにより途上国の発展にも協力し、そして温室効果ガスの排出量を減らすことが出来た場合、先進国の削減量として加算することが出来るのです。
イギリスやイタリア、ポーランド、ドイツなどのEUは環境先進国と呼ばれています。イギリスでは京都議定書が作成された時点で2012年までにマイナス8%の削減目標を設定しました。
しかし、風力発電やエコディーゼルの導入、街の車道を減らして路面電車を復活させるなど、かなり積極的で迅速な環境対策により、実際には15%の削減が可能だと言っています。
また、京都議定書の署名からは国益を損なうという理由から離脱したアメリカも、マンションやビルの建設に規制を定め、グリーンエネルギーや緑化対策を行っているものにしか建設することが出来ないという地域もあります。
その他に、削減目標が設定されていないオーストラリアでもスクールバスを路線バスに組み込み、本数や利用地域を増やすことで車での通学を減らしています。
日本の削減目標は6%ですが、京都議定書制定時より7.7%もふえてしまっているのが現状です。温室効果ガスの排出量が環境対策への取り組みは、他の先進諸国と比べてもかなり出遅れている状態といえます。
先進国としても京都議定書の議長国としても、目標地を達成できないということにならないように、これまで以上に必死で環境対策を行う必要があります。
東京都では条例でビルごとに排出量の規制を行う条例が定められました。また、24時間営業が当たり前のコンビニの営業時間を短くするなどの提案も行われています。コンビニや自動販売機は日本全国で見られる便利なものですが、温暖化への影響はかなり大きいのです。
一人ひとりが現在の高エネルギー消費社会の便利さを考え直さなくては、達成できません。
日本は先進国として豊かな生活を手に入れたのと同時に、豊かな環境を失ってきました。特に里山や魚つきりんといった、人間が自然と共存していた地域までも道路や住宅地、産業地域として開発を進めてきたことがあります。里山や魚つき林は温室効果ガスの吸収源としても優秀な働きをしますし、山や川、海を豊かにする循環と生態系のバランスを保つ働きがあり、異常気象が起きた時の防波堤にもなってくれます。
こういたお金を生み出す産業ではない部分をもっと大切に復活させていく「低炭素社会」への早急な移行が日本の課題になっています。