私たち人間の身体の約70%が水分で出来ています。毎日必要な水分は、1/3が飲み水から、2/3は食べ物に含まれているものから補っています。雨水や川の水は飲み水だけでなく、農作物を育てるときに使われますし、海水のなかから魚や塩を取っていますよね。
水質汚染は、私たちの身体の半分以上を占める水にも大きな影響を及ぼすのです。
水俣病は、熊本県で起こった水銀による水質汚染公害です。チッソの水俣工場からの排水に含まれるアルキル水銀が河川・海水に流れ込み、周辺海域で取れた魚を食べた人や動物に大きな影響を与えました。
水銀は生物の体内で分解されることがほとんど無く、腎臓に蓄積してしまうため、水銀による水質汚染のあった水域のプランクトンや海草をえさとする魚や生物は、周辺海域から出てしまうため近隣地域にも影響が出ました。
カドミウムによる河川の水質汚濁が原因で起こったのが、日本国内初の公害と認定されたイタイイタイ病です。
富山県の神通川流域の金属工場の排水に含まれていた大量のカドミウムが河川に流れ出し、河川の水を使っていた農作物や魚にカドミウムが蓄積しました。
これらの作物や魚を食べ続けた周辺住民は体内のカルシウムが失われる慢性のカドミウム中毒や腎臓障害を引き起こしました。
近年、中国の湘江でも工場からカドミウムを含んだ排水が流出し、イタイイタイ病と似ている症状が見つかっています。
船を動かすために使われる油は、船が座礁したりぶつかって破損してしまうと、海水に流出してしまう場合があります。特にタンカーに積載されている重油が流出すると、周辺海域の魚や海鳥などの生物に大きなダメージを与えます。
今までもタンカーの衝突が起きたあと、重油が海流に乗って流されてしまい広範囲の生態系にダメージを与えた例がいくつもあります。
川や海での水質汚染によって現れるプランクトンの異常発生現象の一つで、赤潮や青潮自体が水質汚染物質というわけではありません。工場や生活排水が河川に流れ込んでしまうと、特定のプランクトンが異常繁殖します。大量のプランクトンが発生した水域ではプランクトンによって酸素がどんどん使われてしまい魚など他の生物が生息できなくなってしまいます。
また、海流が滞ってしまうことにもなり、自然の浄化機能が上手く働かなくなることも多いのです。そのため、漁業にも大きなダメージを与えてしまいます。
赤潮や青潮が発生してしまうような水質汚染か起こった水域では、プランクトンによって酸素だけでなく日光の光も不足してしまいます。
陸上の森林と同じように酸素を供給する働きのあるサンゴも、実はサンゴの中に共生している褐虫藻が光合成を行いサンゴに栄養と酸素を供給しています。
しかし、水質汚染によりプランクトンが異常発生すると光合成を行うことが出来なくなり、珊瑚の中から出て行ってしまいます。褐虫藻が抜けたサンゴは白くみえ、自力で酸素と栄養分を取ることが出来ない状態になって生息できなくなってしまいます。
戦後急速に発展した産業は、日本全国で深刻な水質汚濁をひき起こしました。イタイイタイ病や水俣病など、人体に大きな影響を与える深刻な事態を繰り返し起こさないように、水質汚濁防止法という法律が1970年にできました。この法律では、事業所や工場施設などに一定の排水基準を設け、特性施設からの排水による水質汚濁を防止することが目的です。
しかし近年では、水質汚濁防止法が出来た当初特定施設に含まれていなかった一般家庭からの生活排水や、農業用水も河川や海などの公共水域の水質を悪化させる物質が含まれることが増えたため、環境基準に設定される物質が増えています。