温暖化の影響で近いうちに海底に沈んでしまうというツバルは、南太平洋に浮かぶ珊瑚礁の島の中でもとても美しく写真家やダイバーが憧れるところです。
海に沈んでしまう前に、一度訪れてみたいと思う人も多く、観光客が増えていますがツバルが水没する原因は温暖化の他にもあるのです。
美しい海に生息する珊瑚が長い時間かけて積み重なって環礁という細長い陸地になりました。
ナヌメア・ナヌマンガ・ニウタオ・ヌイ・バイトゥプ・ヌクフェタウ・フナフチ・ヌクラエラエ・ニウラキタ、この南太平洋に浮かぶ9つの環礁とその島々がツバルという国を作っています。そのため、島全体が海とほとんど同じ高さにあり、一番海抜の低い首都フナフチは、海抜1m以下の所から高い場所でも5mほどしかありません。
現在でも首都以外の島々の周りには、栄養豊富で美しいサンゴの海が広がっています。その美しさに引かれて「天国に近い島々」とも呼ばれています。
その日に必要な魚だけを捕り、ヤシの葉を腐らせたわずかな畑でプラカ芋を育てて暮していました。自然に近い暮らしを長い間続けてきたので、温室効果ガスやゴミの排出量もほとんど問題にはなっていませんでした。しかし、イギリスから独立した後、首都であるフナフチでは、生活や建物、産業の近代化が急速に進んでいます。
人口も急激に増えて観光客も増えたことで、増えすぎたゴミやサンゴというもろい地盤に建設された近代都市が地盤沈下を起こすなどの環境問題が深刻になっています。
近年進む急激な地球温暖化によって、標高の高い場所にある氷河や永久凍土など、陸地にあった氷が溶け出し海に流れ込んでいます。
年々海面が上昇し、このままのスピードで温暖化が進むと、ツバルのなかでも海抜の低い地域からだんだんと水没してやがてすべてが海のそこに沈んでしまうといわれています。そのため、ニュージーランドでは毎年ツバルの人を数十人ずつ移住させるプロジェクトを進めています。
地球温暖化による海抜の低い地域の水没が世界的にも注目され話題になっていますが、水没の原因は温暖化だけではなく、人為的な開発によるところが大きいのです。
丈夫ではない珊瑚礁が基盤となっている島に、近代的な都市整備を行ったことでサンゴは削られ穴が開き、もろく崩れやすくなってしまいました。また、水没してしまう可能性の高いこの小さな島を一度訪れておこうと、沢山の旅行客が訪れています。
この観光客を受け入れるために周辺の海を埋め立てて敷地や飛行場として大規模な土木工事を行い、島中から土を集めてしまいました。そのため、地盤はさらに弱くなり海水による侵食が進みやすくなり、地盤沈下によって自ら沈んでしまう道を歩んでいるのです。
資源はほとんどない変わりに、周辺環境にある自然の恵みを受けて暮してきたツバル人は、ヤシの葉さえも上手に利用してゴミをほとんど出さずに暮していました。ですから、ツバルにはゴミの焼却施設がありませんでした。
しかし、近代化が進み観光客や輸入品が増えたため大量のゴミが発生するようになりました。
その大量ゴミは処理することが出来ず、野積みにされて放置されています。そのため、ゴミから出る有毒物質によって水質汚染が起こり、島の基盤になっているサンゴにダメージを与えるなど、周辺環境への様々な影響が問題となっています。
すでに進行している海面上昇の影響で水没している地域も出てきていますが、水没する前に温暖化で多発している津波や高波によって広範囲にダメージを受ける可能性も高いのです。
海面が上がることで、元々土壌の少ないツバルの土地には塩分を含んだ水が上がってきてしまいます。そのため、塩害によって畑で作物は育たなくなってしまいます。
また、珊瑚礁の島であるツバルは真水が少なく人口が集中すると生活用水をはじめ、国全体の水が足りなくなってしまう状態になってしまいます。